政治

「SNS収益停止は言論統制?」自民党の新規制案が招く波紋

最近、自民党が検討している「選挙期間中のSNSでの動画収益を停止できる法改正」が大きな波紋を呼んでいます。来年に予定されている東京都議選や参議院選挙を前に、SNSを活用した選挙活動や情報拡散の影響を問題視し、収益化を停止することで抑制しようという狙いがあるようです。しかし、その裏側にはいくつもの懸念や批判が噴出しています。




1. なぜ「SNSの収益停止」なのか?


4月の衆院補欠選挙(東京・中〇)や兵庫県知事選挙で、選挙関連の動画が大きく拡散されたことを受けて、SNSでの「フェイクニュース」や「審議不明情報」の増加を懸念する声が出てきました。そこで、自民党は選挙期間中に政治系動画を収益化できなくすることで“抑止力”にしたいと考えているようです。

しかしこれに対して、公認会計士・税理士の佐藤沙織氏をはじめ、多くの有識者やユーザーから「テレビの選挙特番やスポンサー広告は収益化されるのに、SNSだけを狙い撃ちするのはおかしい」との批判が噴出。さらに「そもそも言論の自由を侵害するのでは?」という懸念も強まっています。




2. 収益停止がもたらす影響


  • 切り抜き動画が多数消滅する可能性
    政治系動画のなんと60%以上が「切り抜き」で成り立っているというデータがあります。切り抜き制作者の多くは広告収益によって活動を支えているため、もし収益化を停止すれば「約9割の配信者が離れる恐れがある」という試算も。結果として、SNS上の政治議論が縮小し、情報格差が生まれる可能性が指摘されています。

  • 資金力のある候補者だけが得をする?
    お金のある候補者は有料で切り抜き制作者を雇える一方、予算の少ない候補者はそうはいきません。これでは選挙の公平性が大きく損なわれるリスクがあります。

  • 既存メディアへの“逆戻り”
    若年層を中心に、多くの人がSNSで政治情報を得ているという調査結果もあります。しかし、この規制によりSNS上の政治情報が激減すれば、結局はテレビや新聞など“旧来型”のメディアが優位になるのではないか、という声も少なくありません。





3. 海外プラットフォームとの兼ね合い


YouTubeやX(旧Twitter)といったプラットフォームはアメリカ企業です。日本の法律で「収益停止」を強制しても、グローバルな仕組み全体を変えられるのか疑問の声があります。また、仮に日本限定で収益化を停止しても、サーバーの所在地を海外に移すなどで回避される可能性があり、実効性にも疑問が残ります。




4. ネット上の声


  • 「テレビ特番でのスポンサー広告はOKなのに、SNSだけ収益化を止めるのは二重基準では?」

  • 「まるで言論統制。都合の悪い情報を封じ込めようとしているとしか思えない」

  • 「フェイクニュース対策を謳うなら、まずは既存メディアの印象操作も同時に取り締まるべき」

  • 「SNS収益が断たれたら、多くの切り抜き職人が活動をやめてしまう。結果的に情報の多様性が失われる」

特に若者やネットユーザーの間では「SNS規制は政治参加のハードルを高め、民主主義の後退につながる」との危機感が強まっています。




5. 自由と民主主義の岐路


公職選挙法にはSNSを念頭に置いた明確な規定がほとんどありません。今後、自民党を中心とした与野党7党の協議で具体的な調整が進むとされていますが、国民民主党などからは「SNSは若者の政治参加に不可欠であり、収益停止は時代に逆行する」との反対意見も出ています。

一方で、政府や一部の政治家が「偽情報の拡散」を強く問題視しているのも事実。デマや誹謗中傷への対応は必要であるものの、その手段が「収益停止」という一種の“言論統制”につながるのでは本末転倒です。




まとめ


  • 選挙期間中のSNS動画収益停止は、「フェイクニュース対策」や「選挙の公正性確保」を表向きの理由としています。

  • しかし実際には、言論の自由を大きく制限し、情報発信の場を失わせる恐れが強いという批判が相次いでいます。

  • 切り抜き動画の激減資金力のある候補者だけが有利になる懸念も強く、民主主義の基盤を揺るがしかねない問題です。

  • SNSが若者を含む多くの人々の「主要な政治情報源」となっているいま、この規制がもたらす影響は計り知れません。

関連記事

ツールバーへスキップ